「うちに口座を開くのは、税務署に口座を開くのと同じですよ」と、そのプライベートバンカーは言った。彼は、日本に進出した外資系金融機関のPB(プライベートバンク)部門に所属していた。もう10年以上前の話だ。 続きを読む →
「脱税のツケ」米富裕層の憂鬱 『日経ヴェリタス』2009年8月30日号
タックスヘイヴン ──揺れる「無税の楽園」 『ファンド情報』2009年8月10日号
チューリッヒから湖に沿って列車で1時間ほど南東に下り、山間の保養地サルガンスでバスに乗り換えて約30分で終点のファドゥーツに着く。道中はのどかな田舎の風景がつづき、検問はおろか国境を示す標識すらないが、小川をひとつ渡ればそこは世界でもっとも小さな国のひとつ、人口3万4000人のリヒテンシュタインだ。
首都ファドゥーツの中心は郵便局で、そこに観光案内所、歴史博物館、バスターミナルなどが集まっている。街を見下ろす山の中腹に中世の古城があり、リヒテンシュタイ家の当主であるハンス・アダム二世がいまも暮らしている。1719年、ハプスブルク家の高官であったヨハン・アダム・アンドレアス侯爵が神聖ローマ帝国より侯国の認可を受けたのが国のはじまりで、ナポレオン革命とドイツ連邦成立という一九世紀初頭の大動乱を生き延びて、国連に正式加盟する主権国家の地位を獲得した。