ダイヤモンド社と共同で行なっていた「海外投資の歩き方」のサイトが終了し、過去記事が読めなくなったので、閲覧数の多いものや、時世に適ったものを随時、このブログで再掲載していくことにします。
今回は2021年6月公開の記事です(一部改変)。
現在もこの理不尽な状況がなにひとつ変わっていないことは、下記の記事でわかります。
「非正規制度つくった人たちを一生恨む」 図書館職員たちから悲痛な声、関係団体が待遇改善を要求

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日本社会には、誰もが知っていながらも積極的には触れない(タブーとまではいえない)現実がいくつもある。共通項は、①解決が容易でないかほぼ不可能なことと、②それでも解決しようとすると多数派(マジョリティ)の既得権を脅かすことだ。そのため、解決に向けて努力することにほとんど利益がないばかりか、逆に自分の立場を悪くしてしまう。こうした問題の典型が「官製ワーキングプア」すなわち非正規で働く公務員の劣悪な労働環境だ。
上林陽治氏は10年にわたって官製ワーキングプアの問題に取り組んできた第一人者で、著書『非正規公務員のリアル 欺瞞の会計年度任用職員制度』(日本評論社)には驚くような話が次々と出てくる。そのなかでもっとも印象的な事例を最初に取り上げよう。
子ども・家庭相談員はなぜ27歳で自殺したのか
2015年、27歳の森下佳奈さんが多量の抗うつ剤や睡眠導入剤を飲んで自殺した。佳奈さんは臨床心理士になることを目指して大学院で勉強し、卒業後、「障害のある子どもたちや何らかの困難を抱える人たちに寄り添う仕事」に就きたいと北九州市の子ども・家庭相談員の職を選んだ。だがその条件は年収200万円程度の任期1年の非正規で、それに加えて上司から壮絶なパワハラを受けることになった。
佳奈さんが両親や知人に送ったメールには、「また無視される1週間が始まるよ」「顔見るなり『生きてましたか?』とだけ」「同年代の相談者と結婚したらいいんじゃないですか」「昨日もまた2時間、研修行かせてもらえず面談室に呼び出されて問い詰められ、泣かされたよ。辞めたい」「給料分働いていない。自覚がない。意欲がない。と繰り返されました。」などの悲痛な叫びがつづられていた。この上司が佳奈さんに「このままやっていたら、(相談者が)死にますよ」などといったため、「私にはできない。このままじゃ、ひとが死んでしまう。」と深く思い悩んでいたこともわかっている。 続きを読む →