ChatGPTなど対話型生成AIの能力が急速に向上し、ビジネスや教育などさまざまな場面で利用されるようになりました。アメリカで若者の失業率が上がっているのは、AIがホワイトカラーの仕事を代替するようになったからだともいわれます。2026年は「AIが社会を変えはじめた年」として記憶されるかもしれません。
生成AIに使われている大規模言語モデル(LLM)には、データの量やその処理を行なうパラメーターが増えれば、それに応じて性能が上がっていくという特徴があります。この法則がわかったことで、Open AIやGoogle、Meta、xAIなどが競って巨額の開発投資を行ない、計算処理に最適化された半導体GPUを製造するNVIDIAの時価総額が一時、世界一になりました。
LLMは思考能力があるわけではなく、ビッグデータから統計的に次に来る言葉(要素)を選択しているだけですが、モデルの拡張とともに精度が上がり、人間と区別のつかない会話をするまでになりました。パラメーターが増えると、これまでゼロだったパフォーマンスが飛躍的に向上する「創発」が起きるともいわれ、いずれ意識をもつようになると騒がれたことで空前のAIブームが起きました。
生成AIは現在のレベルでも主要言語をすべて理解し、プロンプトだけで高度なプログラミングを行ない、東大の入試や司法試験、医師国家試験に合格します。そうなると、暗記能力を競う学校教育は意味がなくなり、文書整理やデータ管理のような単純な事務作業はすべてAIに任せ、顧客との応答が必要なコールセンターもいずれなくなるといわれています。
コンテンツの制作も、イラストや写真だけでなく動画もプロのレベルに近づいており、フェイク画像やフェイク動画が問題になっています。AIを使って執筆し、大量の作品をネットにアップする「作家」も現われ、芸術や創作の土台が揺さぶられています。
生成AIは汎用技術なので、よい意味でも悪い意味でも、すべてのひとが影響を被ります。これが未来へのいい知れぬ不安となって、わたしたちの焦燥感を駆りたてるのでしょう。とはいえ、若者の人口が多く失業率も高い国とちがって、日本は空前の人手不足ですから、自動運転のバスやタクシーが地方の足になったり、高齢者向けの住宅や介護施設で介護ロボットが働くようになるのはよいことでしょう。そう考えれば、日本はまだ恵まれているのかもしれません。
ひとつだけ確かなのは、プラットフォーム同士の熾烈な競争や米中対立で、テクノロジーの「加速」はもはや止められないことです。未来学者は、2040年には自律したAIが指数関数的に知能を向上させるシンギュラリティ(技術的特異点)が到来すると予測しています。そうなれば、仕事や教育だけでなく社会や人生などすべてが大きく変わるでしょう。
2040年まであと15年ですから、この記事を読んでいるほとんどのひとは(おそらく私を含め)この人類史的なパラダイム転換を体験できることになります。そう考えれば、新しい年がすこしわくわくしてきませんか?
『週刊プレイボーイ』2026年1月5日発売号 禁・無断転載
