逆転した裁判所の判断 〈武富士元会長長男、巨額追徴訴訟2〉

納税者勝訴

武富士元会長の長男が起こした租税返還訴訟を例に、税務当局の論理と裁判所の判断を見ていこう。

一審(東京地裁)ではまず、香港に居住していたとされる3年あまり、税務当局が所得税を課していないことが争点となった。所得税も贈与税も住所によって課税の是非が判断されるのだから、所得税を課さないのであれば贈与税も非課税であるはずだし、贈与税を課税するのなら所得税分も追徴課税すべきだからだ。 続きを読む →

非居住者とは誰のことか? 〈武富士元会長長男、巨額追徴訴訟1〉

武富士元会長長男に対する巨額追徴訴訟の最高裁判決が今週末に予定されているので、この興味深い訴訟を理解するためのポイントを2回に分けて解説する。

第1回は、裁判の争点である税法上の居住者と非居住者についてだ。

事件の概要

長男は97年から香港に移住し、99年にオランダ法人が保有する武富士株1600億円相当を贈与された。当時、日本の税法は受贈者(長男)が日本国の非居住者である場合、贈与税は非課税としており、長男側はそれを根拠に申告・納税していなかった*。だが国税当局は実態基準に照らして長男を非居住者と認めず、約1300億円の追徴課税処分を課し、長男側はこれを不服として東京地方裁判所に提訴した。 続きを読む →

ノー・マネー、ノー・フリーダム

「旅はいつかは終わり、戻るべき家はない」をアップして、ほかにも旅について書いたものがあったことを思い出したので、こちらも掲載します。

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空は抜けるように青く、風はわずかに湿っていた。船外機の轟音が止むと、あたりは静寂に包まれた。はやくも白いヴェールで覆われはじめた太陽が、うんざりするほど暑い午後を約束していた。見渡すかぎり土色の湖面が広がり、遠くに釣り船が何艘か見える。私はとてつもなく広い湖の真ん中で、カンボジア人の若者と二人、取り残されていた。 続きを読む →