安倍改造内閣の目玉とされていた2人の女性大臣が不祥事で相次いで辞任しました。
小渕経産相の場合、父親から譲り受けた地元の秘書に資金管理を任せていたところ不明瞭な支出が相次いだというもので、同情の余地はありますが、「自分の事務所も管理できないのに国家のマネジメントができるのか」といわれてしまえば反論できません。松島法相は選挙区内で配ったうちわを「討議資料」と強弁するなど、奇矯な言動が目立ったため、国会答弁を不安視した首相から引導を渡された、ということでしょう。
なぜ女性大臣ばかりが失敗するのか。その単純な説明は、日本では女性の国会議員の絶対数がきわめて少ないからです。
議会における女性の割合は世界平均が22%ですが、日本はそれを大幅に下回る8%で、世界127位と最低水準です。安倍政権はこれを“世界標準”に合わせようと、女性大臣の数を無理矢理増やそうとしたわけですが、選択肢となる人材プールが小さければそのぶん“スカ”をつかむリスクは高くなります。
この問題を解決するには女性議員の数を大幅に増やす必要があります。これにはたいへんな困難がともないますが、じつはものすごく簡単な方法があります。
スウェーデンなど北欧諸国は女性議員の比率が40%を超えており、“人権大国”を誇っています。こうした国の選挙制度は比例代表制で、議席配分が得票率によって政党に配分されるのですから、政党の側で候補者の男女比を調整したり、優先順位を入れ替えることで女性議員の比率を増やすことが可能です。
一方、同じヨーロッパでもフランスの国政選挙は小選挙区制で、長らく女性議員が少ないことが問題視されていました。国民議会に占める女性の割合は1993年の総選挙で5.9%、それ以前は1%台のときもあったといいますから“男尊女卑”はきわめて深刻です。しかしそれでも、選挙制度を小選挙区制から比例代表制に変えることは議員の既得権を直撃しますから容易ではありません。
こうした状況に業を煮やした社会党内閣は、2000年に「男女同数法(パリテ法)」というきわめて過激な法律を成立させます。これは男女の候補者の数を強制的に同数にさせるもので、比例代表制で行なわれる地方選挙では、この改正によって女性議員の割合は25.7%から47.5%へと大幅に上昇しました。
小選挙区制の国政選挙でも、候補者を男女同数にしない政党の助成金を大幅に減額するという劇薬を投じ、2007年の総選挙では女性議員の比率を18.5%まで上げました。これでもまだ北欧諸国の基準には届きませんが、女性議員が増えたことで、2012年に発足したオランド政権は34人の閣僚のうち17人を女性にして「男女平等」をアピールしたのです。
フランスの経験は、「女性の活用」が生半可なことでは実現できないことを教えてくれます。ありもののなかから適当に外見だけ取り繕うのでは、今回のようなことになるのはわかりきっているのです。
もちろん、「いくらなんでもそこまでしなくても」という意見はあるでしょう。その場合は野党や民間、外国人にまで人材プールを広げ、女性大臣の適材を探すしかないでしょう。
『週刊プレイボーイ』2014年11月4日発売号
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