ハイパーガミーは上昇婚のことで、身分の低い女が上流階級の男と結婚する「玉の輿」が典型ですが、身分のちがいがなくなった現代社会では、自分よりも学歴、収入、社会的地位の高い相手に魅かれることをいいます。
洋の東西を問わず、女性には強いハイパーガミーの傾向があることが知られています。アメリカでは、女性は男性の約2倍、相手に経済的な余裕があることを重視しています。日本でも、20代で年収600万円以上の男性はほぼ全員に交際経験がありますが、年収200万円未満では半分程度です。
欧米の婚活サイトのデータを分析すると、女性が自分より高い学歴の男性を好む傾向も見て取れます。女性が修士号をもつ男性のプロフィールに「いいね!」を押す割合は、学士号の男性より91%(約2倍)も多いのです。
ここで問題なのは、アメリカでは1990年代以降、大学進学率と大学修了率の両方で女性が男性を上回っていることです。1960年には、4年制大学を卒業した女性1人に対して男性は1.6人でした。2003年にはこれが逆転して、男性の大学卒業者1人に対して女性が1.35人になりました。2013年には、25歳から29歳の女性の37%が学士号以上を、12%が大学院や専門職の学位を取得しているのに対し、同年代の男性は30%と8%で、その結果、20代では女性の平均収入が男性を超えました。
女性の社会的地位がこれまで低かったことを思えば素晴らしいことですが、ハイパーガミーの傾向と組み合わせると事態は不穏な様相を帯びることになります。女性が社会的・経済的に成功すればするほど、(自分よりも「上位」の男性が少なくなるので)選択できる相手が少なくなるのです。
アメリカでは2012年、大学教育を受けた未婚の若年女性100人に対して、学士以上の若年男性は88人しかいませんでした(大学院卒では女性100人に対し男性77人)。この傾向が続くと、2020年から39年の間に、同等の高等教育を受けた男性のパートナーがいない女性は、なんと4510万人になると予想されます。
さらに、1960年には若年未婚女性100人に対して働いている若い男性は139人いましたが、男性の就業率が低下してきたことで、2012年には未婚女性100人に対し就業男性は91人しかいなくなりました。こうして、「高学歴でキャリア志向の若い女性の多くが、孤独な未来を歩むことになる」という不吉な予測が避けられなくなったのです。「2030年までに、25歳から44歳の働く女性の45%が独身で子供がいない状態になる」のです
アメリカでは、34人の高学歴女性に対し、ハイパーガミーを満足させる「高収入、高身長、腹筋割れ」の理想の男は1人しかいないとされます。逆にいうと、(男女同数として)97%の男は恋愛の選択肢から外されています。
徹底的に自由化された恋愛市場では、少数の成功した男が多くの女に望まれる一方、多くの男が性愛から排除されてしまいます。これはアメリカのデータですが、日本もいずれ同じことになるのでしょう(あるいは、もうそうなっているのかも)。
参考:Vincent Harinam(2021)Mate Selection for Modernity, Quillette
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