『新・貧乏はお金持ち』新版あとがき

昨日発売された新刊『新・貧乏はお金持ち 「雇われない生き方」で格差社会を逆転する』(プレジデント社)の「新版あとがき」です。

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せっかくの機会なので、本書の成り立ちを述べておきたい。

2008年の世界金融危機の余波を受け、日比谷公園の年越し派遣村など、非正規雇用の若者たちに注目が集まった。マスコミや識者の論調は、この深刻な経済格差を解消するには、企業に命じて非正規の労働者を強制的に正社員にするほかはない、というものだった。私はこの議論に強い違和感があって、非正規の若者がサラリーマンを目指さずに経済的に成功できる実践的な方法がないかを考えてみた。

そこで思いついたのが、フリーターの若者(インターネットカフェ社長)がマイクロ法人をつくり、会計技術を駆使して成り上がっていく「ファイナンス小説」だ。しかしいざやってみると、会計や税務、資金調達の説明が煩瑣になりすぎて、物語の体をなさないことを思い知らされた。そこで解説の部分だけを抜き出して、初心者向けのマイクロ法人の入門書にしてみたのが本書だ。

本書を機に「マイクロ法人」という造語は広く使われるようになったが、そのための有効なマニュアルはまだ少ない。自らの経験に基づいたさまざまな情報が交換されることで、一人でも多くのひとがこの「自由に生きるための道具」を使いこなせるようになれば素晴らしいと思う。

2025年2月 橘 玲