「日本人はできない」という自虐史観から決別しよう 週刊プレイボーイ連載(598)

同性婚を認めないのは憲法に反するとした訴訟で、札幌高裁が違憲の判断をしました。

憲法24条では婚姻について、「両性の合意のみに基づいて成立する」としていますが、判決では、目的も踏まえて解釈すれば「人と人との自由な結びつきとしての婚姻を定めている」として、同性間の婚姻も異性間と同じ程度に保障されるとしました。

「法の下の平等」を定めた憲法14条についても、異性間の婚姻は認めているのに同性間には許さないのは「性的指向を理由とした合理性を欠く差別的取り扱い」だと述べています。同じ日に行なわれた東京地裁の6件目の裁判でも、現行制度は「違憲状態」と判断されており、最高裁もこうした判断を覆すのは難しいでしょう。

夫婦別姓については、最高裁はいまも現行制度が合憲であるとの判断を維持していますが、2021年には裁判官15人のうち4人が「不当な国家介入」などで違憲と判断し、徐々に外堀が埋まってきています。また労働者の待遇格差についても、「同一労働同一賃金」の原則が徹底され、合理的な理由がなく、たんに「非正規だから」「契約社員だから」などの理由で手当や有給休暇を提供しないのは違法とされました。

日本社会の価値観も世界と同じくリベラル化しており、世論調査では国民の過半数が同性婚や夫婦別姓を支持していて、とりわけ若者層では8割に達しています。「自分らしく生きる」ことが至上の価値とされる社会では、ジェンダーや性的指向を理由に個人のアイデンティティを否定することはものすごく嫌われるのです。

日本は近代のふりをした身分制社会なので、いたるところに先輩/後輩の序列と、正規/非正規のような「身分」が出てきて、敬語や謙譲語は目上/目下が決まらないと正しく使えません。しかしこれではどんどんグローバルな価値観から脱落し、「ネトウヨ国家」になってしまいます。

興味深いのは、政治家がリベラル化の潮流をほとんど理解していないのに対して、日本では司法が牽引して社会を変えつつあることです。これは法律家が、合理的に説明できないものを支持できないからでしょう。

同じ仕事をしているのに待遇が違うのはおかしいとの訴えに、「あなたの身分が低いから」とはさすがにいえないでしょう。保守派は同性婚を認めると社会が壊れるといいますが、これは同性婚を導入した多くの国で問題なく社会が運営されていることを説明できません。

日本では右派がこれまで、歴史教科書の「自虐史観」をきびしく批判してきました。しかしなぜか、「海外で行なわれていることが、日本人にはできない」という自虐的な主張をして同性婚や夫婦別姓に反対しています。

しかしこれは保守派だけでなく、ウーバーなどのライドシェアは世界中で使われているのに、なぜか日本では「犯罪が多発する」とされます。さらに世界では共同親権が主流になっているのに、リベラル派は日本で導入すると元夫によるDVの温床になると反対しています。日本人は犯罪者で、日本の男が暴力的というのは、控え目にいっても差別・偏見の類でしょう。

世界のひとたちがふつうにやっていることは、日本人だってできるでしょう。そういう常識に基づいて、合理的な社会をつくっていきたいものです。

参考:「婚姻の自由 同性婚も」朝日新聞2024年3月15日

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