『教えて! 尚子先生 中東・イスラムってなんですか?』発売のお知らせ

ダイヤモンド社の「橘玲×ZAi ONLINE 海外投資の歩き方」の人気連載が『教えて! 尚子先生 中東・イスラムってなんですか?』として電子書籍になりました。Kindle Unlimitedにも入っています。

著者・岩永尚子さんと写真家・安田匡範さんについて書いた序文をアップします。

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岩永尚子さんと安田匡範さんについて(作家・橘 玲)

岩永尚子さんと最初に会ったのはいまから20年以上前で、海外の金融機関の情報サイト「海外投資を楽しむ会」を友人たちと運営していた頃でした。「英語が話せるアルバイトがいたら助かるよね」と思いついて会員向けの掲示板に募集告知をしたら、最初に応募してくれたのが岩永さんだったのです。

岩永さんは当時、津田塾大学大学院生で、休学中にヨルダンの日本大使館で勤務し、任期が終わって大学に復学したばかりのときでした。「なんで海外投資なんですか?」と訊いたら、給料を現地の金融機関で受け取っていたので、それを運用したり送金したりする情報があればと思って会員になったとのこと。私たちの事務所は大学からもさほど遠くなく、「面白そうかな」と思ってバイトに応募したとのことでした。

博士を目指すようなハイスペックな人材を想定していたわけではないので最初は大丈夫かなと思ったのですが、気さくな人柄にすぐに仲良くなって、いっしょに香港ツアーに行くなど、結婚で転居するまで10年ちかくのおつき合いになりました。夫の匡範さんも長くアラブ諸国でJICAの仕事をしており、そのときに知り合ったのだそうです。写真が趣味で、今回の本には当時の写真がたくさん載っています。とりわけシリアの写真は、内戦で崩壊したいまでは貴重なものになってしまいました。

その後、ダイヤモンド社のWEBサイト(ZAi ONLINE)で「海外投資の歩き方」というページをもつことになり、海外在住の知人に現地情報を書いてもらうことにしたのですが、どうしても東アジア、東南アジアに偏ってしまいます。そのときに思いついたのが岩永さんで、「教えて! 尚子先生」というシリーズで、日本人には馴染みのないアラブの事情やイスラム世界のことをあれこれ書いてもらいました。

連載が始まったのがちょうど「アラブの春」の頃で、その後、「イスラム国」が大きな関心を集めたこともあって、岩永さんの記事はとてもよく読まれました。カルチャースクールでアラブ政治の講座をもったり、田村淳さん(ロンドンブーツ1号2号)のラジオ番組にゲストで呼ばれたり、講談社の「世の中への扉」シリーズ『イスラム世界 やさしいQ&A』を執筆するなど、たくさんの反響もありました。

その頃から、「いつかこの連載をまとめたいね」と話していたのですが、日本でもDX(デジタルトランスフォーメーション)が進むなか、電子書籍に関心があったこともあって、その第一号として制作することになりました。

目次を見ていただければわかるように、宗教から文化、生活、国際政治まで、アラブ世界のニュースに接して「なんで?」と思うことが網羅され、とてもわかりやすく、それでいて専門的なこともきちんと押さえて説明されています。私たちがどんな世界に生きているかを知るだけでなく、いまは気軽に海外旅行に行けない状況ですが、将来、アラブ圏を旅行したり、イスラムのひとと知り合いになったときにも役に立つのは間違いありません。

匡範さんのカラー写真はGoogleフォトにアップされているので、それを見ながら読み進むとより楽しい読書体験になるはずです。

橘 玲(作家)