『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方2015』の冒頭をアップします

本書の企画はもともと、「『黄金の羽根』から10年たって、かつて書いたことがどれくらい正しかったかを検証してみる」という話から始まりました。ところがいざやってみると、資産運用のルールや法人の活用法のように原理的に変わらないものもあれば、社会保険制度や海外投資をめぐる税制など、状況が大きく変化していてそのままでは使えないものもありました。10年も経てば情報が古くなるのは当たり前ですが、それをすべて現在の視点から書き直すなら「改訂版」の意味はなくなり、「新しい本を書けばいい」ということになってしまいます。

そこで本書では、不要になった部分を大幅に削って論旨の骨格だけにする一方で、オリジナル版の雰囲気を活かすために(いまとなっては)恥ずかしい文章もそのまま残し、その後の経緯や情報は本文中で追記することにしました。いま読み返してみると過度に露悪的だったり、サラリーマンに対して厳しすぎる表現も目につきますが、そうした勇み足も含めて「日本という国の“秘密”を見つけた」という驚きが、オリジナル版のいちばんの魅力だと思ったからです。本書のような“熱気”のある文章は、現在の私にはもはや書けません。

また今回の改訂にあたって、海外投資とPTについての章を削除しました。

「日本というリスク」を分散するために個人の資産を広く世界に分散させることはますます重要になってきていますが、それと同時に日本国内の金融ビジネスもグローバル化し、いまでは日本の証券市場や国内のネット証券などを利用して海外の金融市場にアクセスすることがかんたんにできるようになりました。ETF(上場型投信)を使った世界株への分散投資については他の本で何度も書いているので、ここで繰り返すまでもないと考えたからです。

『黄金の羽根』の旧版でPTという“究極の節税法”を紹介しましたが、その後、消費者金融大手・武富士創業者の長男が、香港に居住地を移したうえで海外資産の贈与を受けるという“節税”を行なっていたことが明らかになりました。非居住者の認定をめぐって争われた訴訟では、2011年2月、最高裁が生前贈与に対する約1330億円の課税は不当だとして、還付加算金などを含む約2000億円を長男に返還するよう命じています。この判決によって、海外居住を利用した合法的節税は富裕層の常識になりました。

しかしその一方で、2007年の世界金融危機以降、タックスヘイヴンやプライベートバンクへの欧米諸国の批判が強まり、税務当局による租税情報の交換で「守秘性」は有名無実となりました。今後はグローバル企業の租税回避に焦点が移っていくのでしょうが、「海外の金融機関を使えばかんたんに節税できる」という“幸福な時代”が終わってしまったことは間違いありません。こうした状況の変化については、あらためて本にしたいと考えています。

旧版の記述を大幅に整理する代わりに、改訂版では「『黄金の羽根』ができるまで」という章を冒頭に追加しました。これまであまり個人的なことは書いてこなかったのですが、ここでは私がなぜこのような考え方をするようになったのかを、1995年という「特別な年」を出発点に振り返ってみました。

本書は私がこれまで書いたなかで、もっとも大きな影響力を持った本でもあります。私の場合、読者と直接会う機会は多くないのですが、それでも「『黄金の羽根』を読んで人生が変わりました」という方との出会いが何度もありました。

「この本に触発されて会社を辞め、いまは赤坂にビルを3棟持っています」というひとが現われて驚いたこともあります。もちろん成功はそれぞれの努力の賜物ですが、しかしそれでも、この本には彼らの背中を押すなんらかのちからがあった――それが改訂版を出す気になった理由のひとつでもあります。

本書で繰り返し問われているのは、「経済的な視点から見て、私たちが生きているのはどういう社会なのか」ということです。それを知ることではじめて、“正しく”生きる方法がわかります。

もちろん、この世に絶対的な正義があるわけではありません。その“正しさ”を選ぶかどうかは、読者一人ひとりが自らの価値観に基づいて決めることです。

『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方2015』(幻冬舎)
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