国家破産に備える3つの術
大地震がいつどこを襲うのかはわからないが、地震になればどうなるかは誰だって知っている。地面が揺れて、津波が起きるのだ。だったら、それに備えることはそれほど難しくない。地震のない国(オーストラリアなど)に移住するか、それが無理でも、固い岩盤の土地で耐震性の高い住宅に住めば、それだけでずいぶんちがうだろう。
国家破産のリスクも、これと同じだ。経済の混乱がいつ始まるかはわからないとしても、なにが起きるかはほぼ確実に予想できる。詳細は省くけれど、大量に国債を発行したツケは、①金利の上昇(国債価格の下落)、②円安、③インフレ、の3つで清算するほかはない(理論上、これ以外のことは起こらない)。
だとしたら、それぞれのリスクに対して損失を回避するための保険(ヘッジ)をかけておけばいいだけの話だ(車を運転する時に自動車保険に加入するのと同じだ)。
では、どのような保険があるのだろうか。ざっと思いつくものを挙げてみよう。
●金利の上昇(国債価格の下落)のリスクをヘッジする
- 国債先物を売るか、プットオプションを買う。
- 固定金利で長期のローンを組む(借金する)。
- 普通預金か、短期の定期預金で運用する。
●円安のリスクをヘッジする
- 外貨預金やFXで外貨を保有する。
- 外国株や外国債を保有する。
- 為替先物で円を売るか、プットオプションを買う。
●インフレのリスクをヘッジする
- インフレ連動債を買う。
- 固定給ではなく、収入が物価に連動するような職業に就く。
通常、インフレのリスクヘッジには株式や不動産への投資が勧められるが、国家破産の場合はこの戦略はきわめて危険だ。97年のアジア通貨危機や、07年の世界金融危機を見ても、地価と株価がともに下落しているからだ。
個々のリスクに保険をかけるのが面倒な場合は、ETF(上場投資信託)を使って世界市場にまるごと投資する方法がある。
中国やインドなど新興国を含む世界株インデックスは、ACWI(オール・カントリー・ワールドインデックス)とVT(ヴァンガード・トータル・ワールド・ストック)が知られている。どちらも米国市場に上場されているが、日本のオンライン証券会社でも扱っている。この全世界ポートフォリオなら、それぞれの市場の時価総額に合わせて通貨も分散できるから一石二鳥だ(全世界ポートフォリオがなぜ最適なリスクヘッジになるかは、別の機会にあらためて説明したい)。