Q 素朴な疑問なのですが、日本の政治体制はもうずっと前から利権がらみの問題が指摘されているにもかかわらず、全くと言っていいほど変化することはありません。与党が自民→民主となった現在でもそれは変わらないようです。
自分なりに色々な解決方法を考えたりするのですが、それこそ革命を起こして内閣政党総入れ替えのようなことをしなければ変えることは無いのではないかという極端な結論に至ってしまいました。
「日本の政治体制を変える方法」について、是非橘さんのご考察をお聞かせ願いたいと思い立ちまして、今回メッセージを送らせて頂きました。
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今回は、イチローさんからのお問合せをそのまま掲載させていただきました。
最初に、私は現実を所与(与えられたもの)として、それに合わせて人生を最適化するという考え方をしています。自らの手で世界を変えていく可能性を信じていたのは、もうずっと昔の話です。
革命には、社会改革の希望(たとえそれが幻想であっても)を自らの利益と結びつけられる主体が多数派となることが必要です。日本は今後、人類史上未曾有の高齢化社会の到来が不可避であり、既得権を守ることを最大の利益と考える層が社会の大多数を占めるようになります。このような社会では、社会改革の主体が存在しないのですから、原理的に革命は起こりません。
もちろん、増えつづける高齢者が既得権を享受するシステムは持続不可能ですから、現在の社会制度はいずれは破綻するでしょう(それがいつになるかはわかりませんが)。とはいえ、既存の体制が崩壊したときに起こるのは、(『龍馬伝』のような)若々しい改革の熱情ではなく、さらなる混乱と混沌ではないかと思います――すこしペシミスティックに過ぎるかもしれませんが。
もちろん、好むと好まざるとにかかわらず社会は変わっていきます。その最大の要因は、理想へと向かう一人ひとりの努力ではなく、政治空間が貨幣空間に侵食されているからだと思います。特捜検察の不祥事が世間を騒がせていますが、これはそもそも、彼らの望むような「巨悪」がなくなってしまったからでしょう。大物フィクサーを介して政治家と大企業と裏社会が結びつく悪の政治劇は、フラットな貨幣空間では成立しません。自らの存在意義を証明するために、特捜検察は架空の「巨悪」をつぎつぎとつくり出さなくてはならなかったのです。
私は、政治空間が貨幣空間に置き換えられ、ゲーム理論や実験経済学によって最適な制度設計が可能となる未来は、それほど悪くないと考えています。でもきっと、これでは貴兄は満足しないでしょう。
もし私に、貴兄のような若い友人がいたらどんな話をするか考えてみました。
既得権を守るために死に物狂いになっているひとたちを相手に、一度しかない人生を無駄にするのは馬鹿馬鹿しい。日本の社会を変えたいのなら、君自身が閉塞した伽藍から飛び出し、ひとびとを自由なバザールに誘い出すような、目の覚めるような「成功」をしてみせることだ。
おそらくは、こんなことをいうのではないかと思います――ちょっと説教臭いですが。
理想だけではなにも変わりませんが、理想がなければ社会は腐っていくだけです。
期待しています。
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