Qサラリーマンは不利だとのことですが、会社を辞めたほうがいいのでしょうか?
しばしば受ける質問なので、これを機会にこれまで書いたことを簡単にまとめてみます。
『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(2002年)
- 日本国の税制や社会保障制度を観察すれば、サラリーマンがもっとも不利な立場に置かれていることは明らか。→日本国の財政は、サラリーマンから効率的に収奪することでかろうじて成り立っている。
- それに対して自営業者や中小企業経営者は、制度上、きわめて有利な扱いを受けている(合法的に税・社会保障コストを最小化でき、おまけに超低利のファイナンスまで受けられる)。→その結果、成功した自営業者(中小企業経営者)はたちまち豊かになっていく。
- これが、年収1,000万円でもサラリーマンの家計が苦しく、自営業者や中小企業経営者が豪邸に住み、ベンツを乗り回す理由だ。
このことからわかるように、会社を辞めて独立しても現在と同じ収入を確保できるならば、いまよりずっと豊かな生活を手に入れることができるでしょう。しかし、制度的に優遇されていることは、成功を約束しません。当然のことですが、事業に失敗してしまえば貧乏になるだけです。
『貧乏はお金持ち』(2009年)
- “サラリーマン”という職業は、グローバルスタンダードでは存在しない。→年功序列と終身雇用で守られた会社員生活は、もはや維持不可能だ。
- 今後、サラリーマンは2割のクリエイティブクラスと8割のバックオフィスに二極化していく→クリエイティブクラスは成功報酬、バックオフィスは同一労働同一賃金の原則が適用される。
- クリエイティブクラスは会社の庇(屋号)を借りた自営業者のようなものなので、やがてフリーランサーやマイクロ法人として流動化していくだろう(アメリカでは実際にそうなっている)。→映画制作のように、プロジェクト単位で労働市場(専門家市場)から最適な人材を集め、プロジェクトが終了するとチームも解散するようになる。
あなたが会社内のクリエティブクラスなら、成功の可能性はかなり高いのですから、いまのうちからファイナンスの基本的な知識(税金・会計・資金調達)を学んでおくべきでしょう。それによって、会社に残るのか、転職するのか、独立するのかの選択肢が広がります。
ところでこの本を書き終えてから、これではちょっともの足りない、と思うようになりました。会社のなかでクリエティブクラスに入るようなひとは、もともと優秀なので、私がなにを言おうが成功するだろうからです。
サラリーマン二極化論の問題は、必然的に「自己啓発」を呼び寄せることです。2割のクリエイティブクラスになるためには、能力を高め、自分を変えていかなくてはならない。すなわち、努力すればそれだけ幸福になれる、という思想です。
私はこの自己啓発の思想に魅かれながらも強い違和感があって、それについてずっと考えていたのですが、あるとき、進化論の視点から自己啓発をとらえなおすことで、この違和感が上手に説明できることに気がつきました。簡単にいうと、努力すれば成功できるとしても、ひとは(進化論的に)好きなこと以外は努力できないのです。
いま必要なのは、「やればできる」を前提とした自己啓発ではなく、「やってもできない」という不都合な真実を受け入れたうえで、それでも実現可能な成功哲学ではないだろうか――。
そんなことを考えながら、『残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法』という本を書きました(幻冬舎から9月30日発売)。この本では、「やってもできない」成功哲学を次の2行でまとめています。
- 伽藍(がらん)を捨ててバザールに向かえ
- 恐竜の尻尾のなかに頭を探せ
ここで私は、日本の会社は閉鎖的な伽藍だという主張をしています。サラリーマンを苛む強い閉塞感は、彼らが伽藍のなかに閉じ込められているからです。
最後は本の宣伝になってしまいますが、興味があればいちどお読みください。
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