日本人は世界でいちばん仕事が嫌い

日本人の価値観を世界の国々と比較する「世界価値観調査」のことは以前も書いたが、鈴木賢志『日本人の価値観』には、各種の価値観調査のなかから興味深いものがコンパクトにまとめられている。

ここではそのなかから2つ紹介しよう。

最初の表は、「たとえ余暇が減っても、常に仕事を第一に考えるべきだ」という意見に「強く賛成」とこたえたひとの割合だ。いわば、「世界仕事人間ランキング」である。

一目瞭然のように、日本人は堂々の第一位だ。しかも、下から。

日本人は、「余暇が減るんなら仕事なんかしたくない」と考えているひとの割合がきわめて高い。すなわち、「世界でいちばん仕事が嫌いな国民」なのだ。

ランキングを見ればわかるように、上位はほとんど発展途上国で占められている。彼らは、「働かなきゃ生きていけない(遊ぶことなんて考えてられない)」ひとたちであり、同時に、「働けば働くほどゆたかになれる」ひとたちでもあるのだろう。

先進国はおしなべてランクが低いが、そのなかでは“勤勉の国”ドイツが38位に入っている。「仕事よりも余暇が大事」とこたえるのは、アメリカ、オーストラリア、スウェーデン、イギリス、オランダなど、アングロサクソンや北ヨーロッパの国々だ。

しかしそのなかでも、日本人の仕事嫌いは突出して高い。

たとえば、「生きることは楽しむことだ」を身上としているイタリア人も、15.8%が仕事第一とこたえている。あのギリシア(失礼)ですら、余暇よりも仕事を優先するひとが14.5%いる。それに対して日本人は、たったの2.6%しか「仕事が大事」と思っていない。

この結果に納得できないひとも多いと思うが、「日本人はじつは会社が大嫌い」というのは、以前紹介したデータとも整合的だ。「年功序列と終身雇用の日本的雇用制度が日本人を幸福にした」というのは、大いなる虚構だったようだ。

次の表は、「仕事は収入を得るための手段であって、それ以外のなにものでもない」という意見に「そう思う」「どちらかといえばそう思う」とこたえたひとの割合だ。こちらは、「仕事は金がすべてだ世界ランキング」である。

こちらも上位には発展途上国が並んでいるが、先進国のなかでは、韓国・台湾とならんで日本は上位グループに入っている。

「日本的雇用は素晴らしい」と信じ込んでいるひとたちにとって衝撃なのは、アメリカ、ニュージーランド、カナダといったアングロサクソンの国々、デンマーク、ベルギー、スウェーデン、スイス、ノルウェーといった北ヨーロッパの国々の労働者が、「働くってことは金がすべてじゃないよ」と考えていることだろう。

これらの国々は、能力主義(成果主義)で解雇も容易な、「労働者を不幸にするネオリベの国」とされている(北欧は生活保障は手厚いが、企業は能力主義で整理解雇も認められている)。日本人はカネのために嫌々働いているのに、ネオリベの国の労働者は、お金には換えられないやりがいを仕事に見出しているのだ。

この価値観調査の結果を素直に解釈すれば、ネオリベはひとびとを幸福にし、日本的雇用は労働者を不幸にする。

連合がほんとうに労働者の幸福を考えているのなら、成果主義の導入と解雇規制緩和(あとは定年制の廃止と同一労働同一賃金)こそが目指す道になるだろう。まあ、無理だろうけど。

*著者(鈴木賢志氏)のサイトで、これ以外にもさまざまなデータが見られます。興味のある方はどうぞ。